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Artist

Artist:毛利悠子(Yuko Mohri)

HP:https://mohrizm.net/

毛利悠子は、1980年生まれ。2006年、東京芸術大学美術学部先端芸術表現科修了。現在は東京を拠点に活動している。

既製品、ファウンド・オブジェ、自作の装置を組み合わせて、展示環境などの諸条件によって変化していく現象を生成するインスタレーション作品を発表してきた。電子回路によって生み出されるエネルギーが、作品のコンポジションを通じて乱反射することで、日々生起する予測できない諸現象やより大きな世界構造に潜在する複雑性の断片を、視覚や聴覚、またときには触覚を通じて鑑賞者に伝える。

Exibition

  • URL:https://www.artizon.museum/exhibition_sp/js_mohriyuko/
  • 会場:アーティゾン美術館(東京)
  • 展覧会名:ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて
  • 会期:2024年11月2日[土] – 2025年2月9日[日]

Responce

本展タイトルに含まれる「ピュシス」は、通例「自然」あるいは「本性」と訳される古代ギリシア語です。今日の哲学にまで至る「万物の始原=原理とはなにか」という問いを生み出した初期ギリシア哲学では、「ピュシス」が中心的考察対象となっていました。当時の著作は断片でしか残されていませんが、『ピュシス=自然について』と後世に名称を与えられ、生成、変化、消滅といった運動に本性を見いだす哲学者たちの思索が伝えられています。絶えず変化するみずみずしい動静として世界を捉える彼らの姿勢は、毛利のそれと重ねてみることができます。

展覧会のタイトルに使われている「ピュシス」は「自然」「本性」という意味の言葉らしい。

展覧会の空間に入ると、ざわざわとした気持ちになります。

空間にいると、人工的なアンテナと自然のアンテナの中間にあるような、普段どちらからでも到達できないところに自分がアンテナを合わせ始める。

人工的でも自然でもない、規則があるようなないような、いろんな音や動きが会場に響き渡る。

展覧会の中に「芸術作品」がいくつか置かれています。ブランクーシーの「接吻」がインスタレーションの一つの部品として使われている感じです。

普段絵を見る時は、「芸術作品」として鑑賞しているので、見る人は作品の中に入っています。中に入っている状態。しかし、この展覧会では「芸術作品」でなく「モノ」に近い形で置かれています。モデルさんがモデルとしているのではなく、人としてそこにいるような感じ。演じてくれていないので、「作品」になっておらず、中に入れない状態になります。人がいる。という状態で止まるので、こちらも作品の中に入ることで消える「自分」が残る感覚になります。

会場にいて、いろんな作品に触れる内に、自分の中にある着飾った感覚、観念的な感覚が一つ一つ剥がされて、「自然」「本性」が少しずつ現れてくる。そんな展覧会でした。

同時展示で以下の展覧会もやっています。

こちらの展覧会はいわゆる「芸術作品」が壁に飾ってあり、従来通り「芸術鑑賞」をします。

特に「マティスのアトリエ」は色もとても綺麗で、フレッシュな生命力に溢れ、感動します。

しかしこの展覧会を見た後に見ると、すごく既存のチャンネルに合わせてみる感じがして、不思議な感覚でした。